どんぐり姉妹
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【物事は物事でしかない】
吉本ばなな著『どんぐり姉妹』。
産地直送の魚を運ぶ長距離トラック、
その居眠り運転によってある日突然両親を亡くした主人公姉妹(妹)の、ある時の心情。
この世には、意味なく存在するものはない。
魚だって、親だって、トラックだって、居眠りだって。
でも深い意味があるっていうほどのことでもない。
それらはただあるだけだ。
よくも悪くもない。
それなら、今日たまたま目の前のお皿にやってきた魚をしっかり食べてあげよう、
両親の命だと思って食べよう…そう思えるようになったことを、よかったと思う。(p23)
それをどう受け止めるか、
どう色をつけて見るかは自分の心の問題であって、起こった物事というのは本来、
どこまでも客観的なものなのだろうと思います。
【誰かといても分かり合えない】
SNSの普及にも波及する文章だなぁと思いました。
だれもが問題は個人的なあれこれだと思い込んでいるけれど、実はそのあまりにも果てしない広さのなかで、全てがつながっていることこそが不安なのだ。
だからこそ人はそばに触れるだれかがいても、そのさなかでふと私たちにメールを書く。
これほど広大な宇宙に小石を投げても、ちゃんとどこかに波紋は届くということを確かめるために。
目に見えないなにかでも、つながっていることを知るために。(p13-14)
家族、恋人、知人や友人がいたとしても、
物理的な距離が近すぎて言えないことや
同じ空間にいたとしてもわかり合えないと感じてしまう"さみしさ"が、
きっと小さく小さく、毎日積み重なっていって、
ある一点を超えるとネット上の知らない誰かに吐き出したくなるのかもしれません。
吉本ばなな『どんぐり姉妹』
新潮文庫 2013年8月1日初版
写真提供 https://www.pakutaso.com
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