作詞のハナシ-ギャップ萌えは強し-③
最初に。
これは、私が今まで関わってきた作曲家さんや作家さん、
そして及川眠子さんのご本やその他の様々なところで吸収し
自分の感覚に合ったものを好んで用いているやり方なので、
「違うよー」とか「合わないなぁ」と思った方はそっとページを閉じてください。
創作は自分の感覚がとても優先される行為だと思っています。
ご自身の感覚を信じてください。
ただ、作詞作曲について学べば学ぶほど、
作家さんの努力や途方もない苦労が偲ばれて、
なにより面白さにのめり込んでいる自分がいるので、
その面白さや裏側をちらっとでも垣間見せたくて、想いがあふれたときに書いています。
作詞で有効なテクニックの一つに
「ギャップ萌え」
というものがあります。
自分がその曲の中で本当に伝えたいこと、
強調したいこと、
印象づけたいこと、
それをより効果的にリスナーの耳に届ける為に活用できるスキルの一つです。
「ギャップ萌え」と言ってもそんなに難しく考えなくて大丈夫です。
たとえば漫画に出てくるツンデレキャラを思い浮かべて下さい。
恋愛漫画の主人公でも良いです。
外で見せるクールな顔とは裏腹に、時折垣間見せるナイーブな素顔に「きゅんっ」となる、アレです。
影ができるから光が際立つし、
雨の日があるから晴れの日が嬉しくなるし、
冬の寒さを知っているから春の訪れに心躍ります。
ちなみに(蛇足かもしれませんが)。
生きることは苦しいことだから、
苦しみの手放し方の一つとして日本では仏教系の教えが普及してきたように思えますが、
私たちは手放しで日々喜びの中だけに生きているわけではなく、
その苦しみもちゃんと知っているから、
だから「痛みや傷口から目を逸らさず真っ向から取り組んで描いた作品」
に心が動かされるのだと思います。
世の中が綺麗事だけではないって、私たちはちゃんと知っているから。
実際にはどんな風に描かれているのかですが、
たとえばEXILEの「Ti Amo」
C
キスをするたびに 目を閉じてるのは
未来(あした)を見たくないから
表を堂々と手を繋いで歩けない、終わりがゴールでしかない恋人同士の葛藤を「キス」の描写で表現したサビの二行です。
キスをするたびに目を閉じる、この後に続く描写としてやりがちなのが
①「うっとりしちゃう」とストレートに、当たり前のことを書いてしまうパターン
②「二人でいられれば他に何もいらない」とレポートのように説明してしまうパターン
などが考えられます。
もちろんABの布石あってのC(サビ)ではありますが、
キスをするたびに 目を閉じてるのは→未来(あした)を見たくないから
この一言で聴いている側は胸をきゅうっと締め付けられるし、
「二人でいられれば他に何もいらない」けどそんなこと「口にできない、出してはいけない」、
だからせめてこの一瞬だけは他のことはなにもかも忘れて、目の前のあなただけを感じていたい。
今このまま時間が止まってしまえばいいのに。神様は残酷ね、なぜ私達を引き合わせたの…エトセトラ、エトセトラ
と、上のように続いていく果てしない想いを一行で内包できるわけです。
痛みをきちんと描いているから、説明しなくても充分に伝わるわけです。
この
"一行でそれ以上のことを表現する"
ができているのがメジャーな曲にはたくさんたくさんあって、
プロの作詞家さん達は本当に凄いな、と脱帽する日々なのです。
中畑丈治さん作曲のオリジナル曲「スミレ」が思っていた以上に皆さんに受け入れられているので、また引き合いに出して申し訳ないのですが、
B
二度と戻れない日々を 懐かしむより
新しく歩いてく 痛みとともに
これも、普通なら
新しく歩いてく 「前を向いて」
とか
新しく歩いてく 「私らしく」
とか
書けちゃうんですけど、それだと通りいっぺんの上辺だけなので言葉が軽くなるし、浮いてしまう。
そして繰り返し(似たような意味のことを書く)のは、先程の「一行でそれ以上のことを内包し伝える」のと真逆のアプローチなのです。もったいないのです。
新しく歩いてく→痛みとともに
人生楽しいことばかりではなく、幸せな日々が訪れたとしてもそこには永遠なんてないわけで、
楽に生きることなんてできなくて、
誰もが苦しみや喪失や挫折を抱えて生きている
その痛みを忘れてしまうことはできないけれど、だからこそいま、この時、新しく私なりに一歩を踏み出そう
というようなことを内包する一行(にしているつもり)なのです。
でも、テクニックとしての書き方を知らなくても、みんなちゃんと心で感じてくれています。
私がここ最近の作詞のハナシblogでお伝えしているのは
「何かわからない(うまく説明できない)けど、この曲好き」
と言ってくださる方の「何か」の部分を、
できるだけ理論的(?)にお伝えしようとしているだけなのです。
そして「スミレ」に関しても、
他の曲(作詞作曲始めた最初の頃の曲は、何も知らなかったので違いますが)についても、
テクニカル的な書き方を私は行っています。
より伝えたいし、届けたいからです。
メジャーな曲の作詞を読み解くのはとても勉強になります。なにより楽しいです。
ということでまとめると
▶︎作詞には「ギャップ萌え」を使え!
▶︎自分の中の痛みや傷(過去の思い出)と向き合い掘り起こすとヒントが得られやすい!
▶︎一行でそれ以上の内容を語れ!
▶︎メジャー曲の作詞を読み解くのが一番の近道!
というおハナシでした。
なお、質問は公式ライン(@yuuna0310)のお友達登録された方からのみ受け付けています。
SSWさんなど音楽関係者の方やお仕事として関わっている方のみに限らせていただきますが、
作詞について悩みのある方など、私で相談に乗れることがあればいつでもお気軽にご連絡ください。
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