あかいはな(五味文彦)2010年


ホキ美術館にはまだ行ったことがないけれど、以前 渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでやっていた「写実絵画展」に一人で行ったことがあります。


昨年のことです。


2,3時間くらいはいたのかなぁ。


写真のように精緻でリアルな作品を一つひとつ気の赴くまま、見たいだけ、じっくり見て回りました。


いつもポストカードを何枚かと、1枚だけ大きめの作品(壁に飾れるようなもの)を自分に買うことを許しているのですが、このときは五味文彦さんの「あかいはな」に無性に惹かれて買って帰りました。


実際に展示されていたのですけど、なんだかスーッと引き寄せられてしまって。


しばらく絵の前に立ち尽くしてしまったというか、見入ってしまったんです。


光の写し取り方に見惚れてしまったのだと思います。

そして水の、まるで触れているかのような質感を感じさせる絵のタッチにも惹かれたのだと思います。


でね、左下に虫が描かれているじゃないですか。

帰ったその日からずっと壁に飾っているので毎日 目にするわけですが、最初は「なんで虫なんか描いたんだろう。邪魔だな」と思っていました。

「これがなければ美しいものだけで完結しているのにな」と。

それでも気に入っていますから、毎日目に入るところに飾っています。

最近ふっと「この虫がいるからこの作品は活きてくるのだ」と、自然に心がわかったような感覚が走りました。

ああ、なるほど、そういうことか、と。

うまく言葉で言い表せないのですが、均衡がとれているものはたしかに美しいけれど、綺麗なだけじゃいられないのが人間なわけで。


それが生きるっていうことだと思うし、当たり前のことだけれど誰でも年を取れば、シミも皺もできるし体型は崩れやすくなるし、加齢臭は出るし歯槽膿漏に悩まされるかもしれないし。


どんなアイドルだって(夢を壊したらごめんなさい)いびきもかけばトイレにも行くわけで。


永遠のような一瞬を切り取って描かれていること…それがなぜ写真ではなく絵でなければならないのか、
永遠のような一瞬の美(静)のなかにも動の気配を感じさせる存在(嫌われ者になりやすい虫)を登場させているということ、についてふと立ち止まって考えてみた、そんなこの頃でした。

また行きたいな。

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